徘徊老人・まだ生きてます

徘徊老人の小さな旅季行

〔番外編〕花に誘われ春紀行

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春の妖精・カタクリの花

花の命は短いけれど

 前回でも述べたように3月下旬は、今や山野草の代表格となったカタクリの花が満開になる時期だ。例年は埼玉県小川町にある「カタクリニリンソウの里」に訪れ、山の斜面に植えられているカタクリと、手前の平らな場所に群生して咲くニリンソウに逢いに出掛けているし、今季もその予定だったけれど、当日に急用が入ったために午後からしか時間が取れなかったので埼玉まで行くことは断念し、代わりに前回に紹介した武蔵村山市にある「野山北公園」の『カタクリの里』を再訪した。

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カタクリの花の群生

 3月下旬、野山北公園の丘の斜面に植えられている無数のカタクリは、全体としては7、8分咲き程度で、完全に花を開いているものもあれば開花途上のもの、まだ蕾状態のものもあった。ここの規模は小川町のそれの5分の1程度だが、見ごたえは十分にある。公園並びに周辺には散策コース、丘の斜面に設えられた遊具施設、運動場、無料釣り堀、それに立ち寄り温泉もあるので、多彩な楽しみが体験できる場所だ。カタクリは”スプリング・エフェメラル”(儚い春)の象徴的存在なので、花に触れる期間は短いけれど、春の到来を実感するためもあって「カタクリの里」周辺を訪れる人は多い。

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まだ開花途上のものも多くあった

 私の場合は「カタクリ」と「野山の散策」の二つの目的だけにここを訪れるが、それでも年に7,8回はこの里山に出掛ける。もっとも、カタクリは春のひとときを楽しませてくれる花だし、野山の散策は五月蠅い虫と長虫が姿を現さない冬・春に限られるので、カタクリに触れると、その年の「野山北公園」詣は終了となる。

 花の命は儚いけれど、地下で命を繋いでくれている間は再び、次の年も私の目や心を楽しませてくれる。近い将来、私はここを訪れることはできなくなるだろうが、花はそんなことには関わりなく、季節の廻りにしたがって人々を和ませる。

ゼラニウム・フェアエレン

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ゼラニウムには無数の品種がある

 フウロソウ科ぺラルゴニウム(テンジクアオイ)属の多年草で、種類の多いゼラニウムの仲間では「センテッド(ハーブ)・ゼラニウム」に分類される。葉や茎に香りがあり、バラ、オレンジ、レモンのような芳香を有するものが多い。写真の”フェア・エレン”はパイン(松)の香りがすることで知られている。

 ヨーロッパの集合住宅の窓辺には”ウインドウボックス”が設えられており、ここには花を置くという習慣がある。窓辺を花で飾るというのは個人の趣味というより市民としての公共心を表現することに結び付けられている。そこに飾られる花の大半は四季咲きの「ゼラニウム」であり、夏場はこれに「ペチュニア」が加わる。

 日本でも長年、園芸品種を育てている趣味人は四季咲きのゼラニウムを好んでいるようだが、新興住宅地を徘徊して玄関や庭先にある花に接してみると、この花を見かけることは案外少ない。くだんのゼラニウムはもはや古典種であって、今の人の心を惹きつけることはないのだろうか。残念なことである。今の時期はパンジービオラが盛りだが、少しずつチューリップが開花し始め、その花期が終わると次は初夏の花の代表格である「ペチュニア」がポットやプランターの主役に躍り出ることになる。

 ゼラニウム(Geranium)の属名は現在ではペラルゴニウム(Pelargonium)だが、18世紀の博物学者で「分類学の父」(ラテン語二名法を確立)と呼ばれているスウェーデンのリンネがこの花をゼラニウム属に分類したため、今でも園芸店や園芸家には「ゼラニウム」と呼ばれている。園芸品種名としてのゼラニウムには、四季咲きのゼラニウム(古典種)のほか、多彩な花色をもつ改良種で一季咲きの「ペラルゴニウム」、蔓(ツル)性品種である「アイビーゼラニウム」、そして写真に挙げた「ハーブ(センテッド)ゼラニウム」の4種に大別される。私が20年ほど前、園芸にどっぷりとはまっていた頃は、いつもメインの花として四季咲きゼラニウムを庭やプランターに置き、ハンギングポットにはアイビーゼラニウムを用いることが多かった。

キジムシロ(雉筵)

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ヘビイチゴミヤマキンバイと同じ仲間

 バラ科キジムシロ属の越年草もしくは多年草。春から初夏にかけて日本全土の野山に咲くありふれた花で、ヘビイチゴミヤマキンバイと同属。花の大きさは10~15ミリ程度とひとつひとつは小さいものの、緑の葉の上に咲く黄色の花弁がよく目立つ。ミヤマキンバイ(深山金梅)は高山植物として大切に扱われるが、本種やヘビイチゴは雑草扱いされるので注目されることはまず少ない。しかし、よく見るとかなり美しい存在である。

チオノドクサ(雪解百合) 

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早春から咲く球根性多年草

 キジカクシ科チオノドクサ属の球根性多年草クレタ島キプロス島、トルコが原産地。耐寒性があるので植えっぱなしでも例年、晩冬には目を出し、早ければ2月には花を咲かせる。スイセンと同じ季節の花と思えば良い。

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青紫の花びらが美しい

 写真のものは「ルシリエ」「ルシリアエ」「フォーベシー」などと呼ばれている品種で交雑が進んでいるためか色の濃淡がかなりある。また、花色が白やピンクのものもあるが、個人的にはこの花弁の先端が青紫で中心部が白色のものが好みである。

カレンデュラ”冬知らず”(ヒメキンセンカ、ホンキンセンカ

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開花期間がとても長い

 キク科カレンデュラ属の多年草で原産地は地中海沿岸。キンセンカは改良品種がとても多く、寄せ植えや切り花としてよく用いられる。ここで取り上げたキンセンカはその仲間の中ではもっとも地味なもので、”ハーブ”として重用される以外は野草化し、道端でも見掛けることがよくある。

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日があまり当たらないときは花弁は閉じ気味

 「冬知らず」の品種名がある通り寒さにはかなり強く、日当たりの良い場所では1月頃には開花し6月頃まで咲く。学名は"Calendula arvensis"で、属名のカレンデュラの語源はカレンダーである。カレンダーは”帳簿”を意味するが、この花と帳簿との関係は不明だ。写真のように、曇りのときは花は半開き状態だが、ひとつ上の写真のように日当たりが良いときは花弁を目いっぱい開き、花の中心部も笑顔になる。

オダマキ(西洋オダマキ

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改良品種が無数にあるオダマキ

 キンポウゲ科オダマキ属の多年草。50センチほどの高さに直立し、上部に多数の花を咲かせる。日陰でもよく育ち多くの花を咲かせるので日当たりの少ない庭やベランダで育てることが可能だ。

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オダマキは交雑しやすいので、多数の花色がある

 セイヨウオダマキは元々、交雑種から育成されたものなので多数の品種があり、花の形や花色が異なるものがとても多い。

 山野草として扱われる日本原産のオダマキには、高山植物として扱われる「ミヤマオダマキ」のほか、「ヤマオダマキ」などがある。こちらは高さが10~20センチほどで、うつむき加減の美しい花を咲かせる。

オランダカイウ(阿蘭陀海芋、カラー、リリー・オブザナイル)

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カラーの仲間だが湿地を好む

 サトイモ科オランダカイウ属の球根性多年草。カラーの仲間はその立ち姿と清楚な花を有することから切り花やブーケ(花束)に用いられることが多い。カラーの語源はその花の形が襟や袖の形を整えるカラー(collar)に似ているから、清楚な美しさを有するのでギリシャ語のカロス(美しい)に由来するなど諸説ある。カラーは色が豊富だが"color"を語源とするわけではない。

 切り花やブーケに用いられるカラーは乾地で栽培されるものだが、「オランダカイウ」はエチオピアを原産地とするものでカラーの原種の中では唯一、湿地に育つものである。「リリー・オブザナイル」の別名があるようにアフリカでは大切な花とされ、エピオピアでは国花に指定されている。この花の学名は”Zantedeschia aethiopica”であり、種小名に「エチオピア」の文字がある。なお、写真は国分寺崖線の湧水を集めた「お鷹の道」に沿って流れる小川に自生するカラーを撮影したもの。

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オランダカイウは大きな仏炎包を有する

 カラーの花は「花弁」ではなくガクが変化したもので、その特徴的な形から「仏炎包」(ふつえんほう)と呼んでいる。後に挙げるが、「ミズバショウ」もこの「仏炎包」を有する。

ベニバナトキワマンサク(紅花常盤万作、アカバトキワマンサク

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赤い花は通常種が変異したもの

 マンサク科トキワマンサク属の常緑性低木。常緑性なので冬でも少し葉は残るものの春になると新しい葉が生長する前に写真のような花を付ける。通常のトキワマンサクははクリーム色の花を咲かせるが、突然変異で赤い花を付けるものが出来て、現在ではこの「ベニバナ」のものが主流になっている。写真のものはやや花が少ないが、マンサクの語源と言われる「豊年満作」のように枝いっぱいに細い帯のような花を付けるものも多い。 

ムラサキケマン(紫華鬘)

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ホトケノザに似た感じの花。毒草として知られる

 ケシ科キケマン属の越年草。やや湿った木陰などで見られる「雑草」。花の形は「ホトケノザ」に似ているが、こちらの草のほうが花数は多く、とくに頭頂部には写真からも分かる通りビッシリと咲く。花冠は筒状でその長さは10から20ミリ程度。先端部は唇形状に開く。草全体が有毒でアルカロイド成分を有する。この特性から薬草に分類される。これを食した場合の中毒症状は嘔吐、酩酊状態、昏睡、心臓麻痺などがある。ただし、現在のところ死亡例は発表されていないらしい。

シャガ(射干、胡蝶花)

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やや湿り気のある木陰に群生する

 アヤメ科アヤメ属の多年草。中国原産だがかなり昔に日本に入ってきたためか、学名は”Iris japonica"になっており、種小名には「日本の」とある。山里のやや湿った木陰にはどこにでも見られるが、この草花は種はできず地下茎のみで増えるため、人為的に移植したか、種を作る中国産のものが移入されているのかは不明なようだ。

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花は清楚でなかなか美しい

 花は白地に青とオレンジの模様が混じりなかなか美しい。今回は国分寺崖線下の小川、府中崖線下の小川、小金井の貫井神社境内などで群生する様子を観察した。数年前は武蔵村山市の六道山公園の散策路でこの花の大群生が見られたので今回、久しぶりに出掛けてみたのだが、残念ながらすべて撤去されていた。葉っぱすら見掛けなかったので、地下茎ごと撤去されたようだ。種子はないので、今後はシャガの群生を見ることはできないだろう。残念なことである。

 シャガの大群生といえば、奈良の吉野山の斜面を思い出す。数年前までは毎年、吉野山へ桜見物に出掛けていたが、山頂から下る際はいつも谷沿いの道を使った。そこには一面、シャガの大群生があった。一目千本のヤマザクラはこの上ないほど見事に咲くが、その陰にあっても、シャガの凛々しい花の群生は負けず劣らず見応えがあった。

ヤブレガサ(破れ傘)

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葉の形が破れた傘のようにみえる

 キク科ヤブレガサ属の多年草。山里の林の日陰場所で目にすることが多い。茎は高さ1mほどまでに伸びる。花は初夏に付けるが10ミリ程度の小さな花なので、開花に注目する人はまずいない。私自身、この花には何の関心も抱かない。

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ヤブレガサの新芽

 この山野草の魅力は地中から顔を出し始めた新芽の姿形にある。私は今の時期に山里へ散策に出掛けたときは木陰に入るとこのヤブレガサの新芽を探すことがしばしばある。新芽は写真のように綿毛に覆われ、破れた傘をすぼめたような姿をしている。これが愛らしいということで、自然のものだけでなく改良園芸種まで出回っている。斑入り(ふいり)のものがとくに人気が高いらしい。山野草の世界はかくも不可思議である。

カキドオシ(垣通し、連銭草)

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ツル性の草花なので地面を這うように育つ

 シソ科カキドオシ属の多年草。花は10~15ミリ程度の大きさなのでこの花の存在に気が付かない人がほとんどだ。しかし、一度でもこの存在を意識すると毎春、野原でこの花を見つけることが楽しみのひとつになる。現実には、日本全国のどこにでも自生し、身の回りにある野原や道端でも簡単に見つけることができる。

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群生するカキドオシ

 そう、あなたがよく遊んでいた春の原っぱには、こんなにも小さいが、これほどに愛くるしい「雑草」が地べたを覆っているのだ。そして、まったく存在に気づかず踏みつぶしていたのだ。

カウスリップ(黄花九輪桜)

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残念な名前だが花はとても美しい

 サクラソウサクラソウ属の多年草。標準和名の”キバナクリンザクラ”ならその姿に相応しいが、英名の”カウスリップ”はとても残念で可哀そうな名付けである。cow-slipは「牛の糞」という意味になるからだ。それでもこの花は食用にもハーブとしても薬草としても用いられる。イギリス人は「牛の糞」を口にするのだ。一方、ロシアではこの花を「初花」と名付け、春の到来を告げる存在と位置付けた。属名がPrimula、すなわちプリムラ=プライムなのだから「初花」であっても何の不思議はない。

 姿形は、以前に取り上げた「プリムラ・ポリアンサ」に似ている。というより、プリムラの原種がこの花なのだ。園芸種のプリムラよりはやや背が高くなり花付きも今一つといった感じだが、写真からも分かる通り、本家本元ならではの深い味わいがある。もっとも、この品種の姿そのままに花付きを良くしたり花色を変化させたりした改良種もある。そちらのほうは何やら徒長(間延び)したプリムラのようで、個人的には好みではない。

ミズバショウ水芭蕉

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近年は至るところで栽培されている

 サトイモミズバショウ属の多年草ミズバショウ尾瀬の結び付きは誰もが知るところで、この花を見るためには「はるかな尾瀬遠い空」まで出掛けなければならないと思っている人は案外多い。実際には、池(沼)を有する「身近な公園」でも多く栽培されている。写真は「カタクリ」の項で挙げた武蔵村山市の野山北公園のもので、3月中旬から4月上旬頃が見頃だ。本場?の尾瀬では5月から6月上旬が見頃となる。低地では春が来ると、高地では夏が来ると思い出す花なのだ。今年はコロナ禍が拡大中なので、尾瀬ミズバショウも落ち着いて咲き揃うことができるのではないか?

 オランダカイウのところでも触れたが、白い花のように見えるのはガクが変化した仏炎包。花は中心にある「ツクシ状」のものでこれを肉穂花序(にくすいかじょ)という。ミズバショウの名は沖縄や奄美地方に群生するイトバショウに葉の形が似ており、清らかな水辺に生育することからこのように名付けられた。なお、イトバショウの葉の繊維は「芭蕉布」の原料になる。

イカリソウ(碇草、錨草、淫羊藿(いんようかく))

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名前の由来はその花の形にあることは言うまでもない

 メギ科イカリソウ属の多年草。たとえ、この花の名前を知らなくても船のイカリに似ているということはイメージされるはずだ。耐寒性があり日陰でもよく育ち花色がきれいな山野草として人気が高い。また、薬草としてもその効能はよく知られており、強壮薬として用いられる。中国名は「淫羊藿(いんようかく)」であり、その名前から推測できるように精力剤の原料となる。

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白花が特徴的なトキワイカリソウ

 写真のトキワイカリソウイカリソウの近縁種。人気の花ということもあっていろいろな原種や近縁種、改良種が見いだされている。初心者にも育てやすいということもあり、春の山野草として安定した人気を誇る。”夕映”や”多摩の源平”などという洒落た名前をもつ品種は愛好家の間で評価が高い。

スミレ(菫)

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タチツボスミレ~最近では一番多く見かける

 スミレ科スミレ属の多年草。スミレの狭義の学名は"Viola mandshurica"で、スミレ、や写真に挙げたタチツボスミレ、アツバスミレなどが種小名の”マンジュリカ”に属する。野原や山里、ときには公園や路地でよく見かけるスミレはタチツボスミレ(立坪菫)の場合がほとんど。葉が丸みを帯びた心形であればタチツボスミレ、葉が長楕円形であればスミレだと区別がつく。もっとも、スミレの仲間は原種だけでも60種ほど、さらに交雑種も数十種あると考えられているので、道端に咲いているスミレが園芸種のこぼれ種から生育した可能性もなくはない。なお、種小名の「マンジュリカ」は「満州の」という意味である。

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白い花に青紫のすじが美しいアリアケスミレ

 スミレ=Viola=ヴァイオレットなので花の色は紫と思いがちだが、写真のアリアケスミレのように白色のものもあり、アツバスミレは白と紫のバイカラー、キスミレはその名の通り黄色などの種類もある。世界では約300種もあるらしいので、スミレの世界は深さも広さもある。

 アリアケスミレの学名は”Viola betonicifolia"なので、狭義のスミレ(マンジュリカ)には属さず、通常は「スミレの仲間」として区別される。写真のスミレは愛好家の渾身の作なので色のバランスがとても良いが、花色は変異しやすいためどんな色の花が開くのかは育ての親の楽しみでもある。

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花弁のよじれが特徴的なニョイスミレ

 写真のニョイスミレ(如意菫、ツボスミレ、”Viola verucunda")もマンジュリカではないスミレの仲間。写真のように花弁がよじれて咲くのが特徴的。花は白を基準に紫色のすじが美しい。故志村けんの歌でよく知られる東村山の庭先にある多摩湖(実際には東大和市)の東側にある狭山公園の道端で見つけた。一帯は無数のタチツボスミレが満開状態だったがその一角だけにニョイスミレの群生があった。広大な公園の敷地の中で、ここだけにタチツボスミレではない種のスミレが咲いていたのである。合掌。

ショウジョウバカマ(猩々袴)

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湿った谷間に咲く人気の山野草

 シュロソウ科ショウジョウバカマ属の多年草。日本北部、サハリン南部、千島列島南部を原産とする山野草。原産地から分かる通り耐寒性はとても強い。半日蔭のやや湿った谷間に咲く。また、雪解け水が流れ込む平地にも生息する。背丈は10~20センチほどのかわいらしい野草で、園芸種としても人気がある。ただし、花期が終わって種子を作り始めると花茎は30センチ以上に伸びることもある。花は赤紫色が基本だが、ピンクや写真のように白色のものもある。

アミガサユリ(編笠百合、バイモユリ、貝母)

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絶滅危惧種に指定されている山野草

 ユリ科バイモ属の蔓性の多年草。地下に鱗茎をもち、梅雨時期から休眠する”スプリング・エフェメラル”である。全草にアルカロイドを含む「毒草」であるが、この特性を利用して「薬草」として用いられることも多い。中国原産で700年前から栽培されていた。日本には江戸時代の享保年間に移入された。現在は野生化しているものもあるが、園芸種として販売されてもいる。近縁種にはクロユリなどがある。

ノウルシ(野漆)

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ウルシの名があるだけに有毒だ

 トウダイグサ科トウダイグサ属の多年草。かつては河川敷や湿地帯で群生していたが、開発が進んだことでその姿を見る機会は激減した。名前に「ウルシ」が付いているとおり毒草だが、本来のウルシとはまったく関係はなく、葉や茎からウルシに似た乳液を出すことから名付けられたようだ。この液体に触るとかぶれを起こす。花弁やガクはなく、花のように見えるのは葉の一部であり、雄蕊や雌蕊を包むような形になっている。これを「杯状花序」という。

ミミガタテンナンショウ(耳形天南星)

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独特な仏炎包をもつ花

 サトイモ科テンナンショウ属の球根性多年草。学名は"Arisaema limbatum"で、種小名の「リムバートゥム」は「耳の大きい」という意味。球根は有毒ながらでんぷん質を多く含むので食用とされることもある。 仏炎包の左右に張り出しがあるので、この特徴から「ミミガタ」の和名が付いた。山野の肥沃な場所によく生育するため、里山の散策では案外目にすることがある。

タンチョウソウ(丹頂草、イワヤツデ

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花や葉の形が独特な山野草

 ユキノシタ科タンチョウソウ属の多年草中国東北部朝鮮半島の渓谷の岩場などに自生する。耐寒性が強いために育てやすく、山野草の園芸種として人気があり改良種も多い。花色は白だが、改良種には咲き始めは赤色に染まるものもある。葉の形が「ヤツデ」に似ているので「イワヤツデ」という別名があり愛好家にはこの名のほうが通りが良い。タンチョウソウの名は、その花のつぼみが赤みを帯びていることに由来する。

ユキワリイチゲ(雪割一華)

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花も美しいが名前も良い

 キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。本州西部から九州の山林などに自生する。山野草として人気があるため園芸店で入手できる。地下に根茎があり、夏場以降は地上から姿を消す”スプリング・エフェメラル”の仲間。花付きはあまりよくないので、イチリンソウの仲間では育成がやや難しいとされている。近縁種にはイチリンソウニリンソウキクザキイチゲアズマイチゲなどがあり、いずれも春咲きの山野草として人気は高い。

ドウダンツツジ灯台躑躅、満天星)

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春は花、秋は紅葉が楽しめる

 ツツジドウダンツツジ属の落葉性低木。原産地は日本だが現在、自生地は少ない。ただし庭木、街路や生垣の低木としてよく用いられているので目にすることは多い。白い小さな壺形の花は葉が出る前に咲く。丈夫な木なので日陰でも育つが花付きは悪くなる。春は無数の小さな花、秋は赤く色づく葉が楽しめるので日当たりの良い場所で育てたい。

フリージア

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花色だけでなく香りも良い

 ユリ科フリージア属の球根性多年草。香りがとても良いので切り花や花束としてもよく用いられる。園芸種としても評判が良いためか改良種も相当に多い。花色は白、ピンク、赤、黄、オレンジ、紫、複色など多数あり、さらに一重咲と八重咲とがある。”ポート・サルー”、”スカーレット・インパクト”、”ハネムーン”などといった品種名で多数のものが出回っている。

ブルーベリー

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ブルーベリーは味も良いが見た目も良い

 ツツジ科スノキ属の落葉性低木。北アメリカ原産。ブルーベリーは果実がよく知られているが、花も意外に美しい。水はけの良い酸性土壌を好むので日本の庭木には最適だ。春には花を楽しみ、収穫後は味を楽しむ。ブルーベリーは目に良いとされているが根拠に乏しい。しかし、美しい花を愛でるのは目に良いことは確かだ。

ネモフィラ・マクラータ

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青い斑点が可愛らしい

 ”ネモフィラ・メンジェシー”についてはすでに触れている。「ひたち海浜公園」の大群生は今が見頃だが、コロナ禍のために今季は入園できない状態にあるようだ。個人的には写真の”マクラータ”が好みだが先にネモフィラを取り上げたときにはこの品種が見つからなかったということを述べた。が、先ごろ見つけたので撮影してみた。

ヒトリシズカ

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ヒトリシズカが賑やかに咲く

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茎が緑色の品種

 ヒトリシズカについてもすでに取り上げている。今回はその群生と、茎色が通常種とは異なるものと出会ったので撮影してみた。