私にとって春の到来を実感するのは「爽やかな風」でも「温かい陽光」でもなく、路傍で、あるいは公園や空き地でホトケノザ、ヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、カラスノエンドウなどの花を見出したときだ。ガーデニングブームが安定的に継続しているので、厳冬期でも至るところで園芸種のパンジーやプリムラ、クリスマスローズ、サクラソウなどの花を見出すことは多い。もちろん、これらの花々も私の好みであるし、以前には大切に育てていたことはあるが、それはあくまでルーティン内のことであり、初冬から始まるガーデニングファンの恒例行事に過ぎない。
3月に入り、新しい交換レンズを2本購入した。1本はやや性能の良い標準ズーム(35ミリ換算で24~120ミリ)だが、もう1本は35ミリ換算で90ミリのマクロ(接写)レンズ。この2本のレンズの性能を確かめるには春の花を試写するのが良いと考え、春の花を探しに近隣を徘徊してみた。野草(雑草)から山野草、それに園芸種、木々の花を見つけては撮影してみた。今季は春の訪れが早く暖かい日が多い反面、雨降りも多いためか園芸種は意外にダメージを多く受けている。一方、野草(雑草)は花付きは早く、梅や桜、沈丁花など木々の花も1、2週間ほど開花が早まっている。
レンズは想像していたよりも性能はかなり良いようだ。しかし問題は、撮影技術と撮影に対する心構えである。私には芸術的センスが皆無なので、花の美しさを引き出す能力はない。また、花の接写は「忍耐力」が勝負(光の差し方や風の強弱)なのだが、私の辞書には「我慢」というものがないので、適度な条件が揃えばさっさと撮影を切り上げてしまう。それでも、ある程度の画像を得ることができたとするならば、それはレンズの性能と、それ以上に花たちの微笑みのお陰である。
春の花たちが一番華やぐのは3月下旬から4月中旬である。今回は3月6、7日の撮影だ。まだまだ役者は出揃ってはいない。本項は第一弾ということで、この両日に見出すことができた早春に咲く花たちのほんの一部の表情に過ぎない。
花に誘われるのは私だけでなく、鳥たちも同じようで花の蜜を求めて河津桜の元にやってきた。人は花を愛で、心の滋養を満たすだけだが、ヒヨドリは5月からの繁殖期に備えるために栄養分を盛んに摂取していた。
プリムラ・ポリアンサ(ポリアンタ、ジュリアン)
プリムラ・ポリアンサは私が以前「花人」だったころにもっとも多く育てていた園芸種。サクラソウ科プリムラ属。色鮮やかなものが多いが、寒さや雨に弱いために色落ちが激しい、根腐れが起こりやすいという欠点があった。日当たりが良く、かつ雨に当たりにくい場所に植え、花柄摘み(咲き終わった花柄を撤去すること)を丁寧におこなうことが重要だった。プリムラは「プライム」の意味で、春一番に咲く花のこと。ポリアンサは「多い」という意味で、花をたくさんつけることによる。改良小型種は「ジュリアン」の名で呼ばれていたが、現在ではポリアンサとジュリアンの区別はなくなっているようだ。
オオバコ科クワガタソウ属のいわゆる雑草。花は小さいが群生するとかなり美しい。残念な名前の代表格で、「イヌノフグリ」は「犬の陰嚢」のこと。種子の形がそれに似ているのでこう名付けられた。花には何の責任はなく、名は体を表さず、いつも可憐に咲く。存在は名に先立っている。春先にこの花を見つけると、私は実存主義者になり、キルケゴールを読みたくなる。そして彼の本を手にし、いつも同じページを反復している。実に、死に至る病なのだ。
シソ科オドリコソウ属のいわゆる雑草。明治以降に帰化した外来種だが、今では至るところで見ることができる。大型種はオドリコソウといい、これは見ごたえがあるので自然公園などによく管理栽培されているが、小型種の「姫踊子草」は完全に雑草扱いで、道端に咲いていても大半は踏みつけられる。
ナズナ(ぺんぺん草、貧乏草)
アブラナ科ナズナ属。春の七草のナズナは本種を指す。食用になるのは若葉だが、特徴的なのは三味線のバチに似た形をしている種子。これを少し裂いて茎全体を軽く振ると 「良い」音がするので、子供の頃はこれでよく遊んだ。種子の形から「ぺんぺん草」と呼ばれ、一般にはこの名のほうがよく通じる。先端部に花を付けてはそれが種子になり、またその先端部には花を付ける。これを何度も繰り返して背丈を伸ばす。これを「無限花序」と言う。なお、荒れ地に群生するために「貧乏草」とも呼ばれる。私のような極貧家では「ぺんぺん草」も生えないが、代わって近縁種の「タネツケバナ」はよく茂っている。
ノボロギク(野襤褸菊、サワギク)
キク科キオン属の雑草。これこそ正真正銘の雑草で、これを目に留める人はまずいない。写真にあるように種子は冠毛をつけるので僅かだけ人目に触れるかもしれない。花も華麗なところはひとつもなく、茎は無駄に強度があり根もよく張るので引き抜くのに苦労する。畑では有害植物の代表格。こうした「無駄」だけの存在感を有する植物も私の好みのひとつだ。
ホトケノザ(仏の座)
シソ科オドリコソウ属の雑草で、ヒメオドリコソウによく似ている。春の七草にあるホトケノザは「コオニタビラコ」のことで、標準和名のホトケノザは本種を指すので紛らわしい。この本当のホトケノザはとくに有害ということではないようなので間違えて食しても大丈夫とのこと。実際、若草を食する人がいるらしい。写真から分かると思うが、小さいがかなり目立つ花を有しているので、 群生している様子はなかなか見事だ。
ツルニチニチソウ(ビンカ・ミノール)
キョウチクトウ科ツルニチニチソウ属のツル性の植物で、雑草除けのためにグランドカバーの草として用いられることが多い。名前から分かる通り、夏の花の代表格である「日々草」の仲間である。
花は写真のように紫色のものが多いが、白色のものもときおり見かける。なお、キョウチクトウの仲間は葉に「アルカロイド」を含むものが多く有毒であり、本種も例にもれない。くれぐれも食さないように。
メギ科メギ属の常緑低木で、春に花を付ける。葉は緑色が通常だが、日照や気温など環境の変化によって色変わりする。写真の木は自宅の近くにある府中市中央図書館敷地内の北側にあるもので、周囲にある木々も一斉に花を咲かせていた。
花のひとつひとつはとても小さいが、写真のように数多く咲くのでなかなか見ごたえはある。とはいえ、この花に注目する人はほとんどいないようだが。
オオアラセイトウ(ムラサキハナナ、ショカツサイ、ハナダイコン)
アブラナ科オオアラセイトウ属で、江戸時代の末期に日本に入ったとされている。異名が多く、花好きは「ムラサキハナナ」と呼ぶが、なぜか年配者は「ショカツサイ」や「ハナダイコン」と言う場合が多い。背丈は案外高くなり、一株にはたくさんの花を付けるため群生すると見事だ。繁殖力が強いため、野原や空き地に数株あると翌年は群生するようになる。
ハボタン(ハナキャベツ)
アブラナ科アブラナ属で、花は先端部に小さく咲くが、通常は花期(4,5月)の前に処分される。花の少ない冬場に植えられ、縮れた多数の葉がボタンの花のようにみえることから花壇やプランターで育てている場面を案外見掛ける。また、冬場の寄せ植えの中心部に用いられる場合が多く、写真のように前景にはパンジーが使用されるのがほとんどだ。春先には写真のように茎が伸びて冬場とは違った姿に変貌するので、3、4月まで鑑賞用植物としてなんとか生き残る。キャベツの仲間でありながら結球せず、近年は「青汁」の素材として用いられるケールの同属であり、このハボタンはその改良種といわれている。
アブラナ(菜の花)
アブラナ科アブラナ属の花の総称が「菜の花」で、観賞用の菜の花としては通常、「チリメンハクサイ」が用いられる。しかし、食材に用いられる白菜や青梗菜もそのまま畑に放置されると写真と同じような花を付ける。菜っ葉の花が菜の花と思えば良く、それ以上でも以下でもない。
ラッパスイセン
ヒガンバナ科スイセン属の花で、二ホンスイセンとセイヨウスイセンに大別される。または花の中央にある副花冠が短いものをスイセン、長く突き出ているものをラッパスイセンと呼ぶ。越前水仙やそれを導入した伊豆半島の爪木崎水仙は12月から2月頃が見頃だが、写真のようなラッパスイセンは早春の花として今が見頃だ。
スイセンの学名は「ナルキッソス」であることはよく知られている。森の妖精(ニンフ)の一人エコーはお喋り好きであったためにゼウスの怒りを買い自分からは声を発することができなくなり、ただ他人の言葉を繰り返すことができるだけとなってしまった。ある日、エコーは美少年のナルキッソスと出会い一目惚れをしてしまった。しかし、エコーはナルキッソスに話しかけることはできず、ただ、彼の言葉をオウム返しすることしかできなかった。このためエコーの気持ちは通じず、彼女は 悲しみのあまり肉体を失い、声だけの存在(木霊=こだま)になってしまった。こうしたナルキッソスの態度に怒った神は彼に自らしか愛せない(ナルシシスト、ナルシスト)という罪を与えた。このため、ナルキッソスは池の水面に映る自分の姿だけを愛し、その姿に触れようとして池に落ちて死んでしまった。その後、神は彼に許しを与え、ナルキッソスは池の傍らに咲くスイセンの姿になって蘇った。スイセンがうつむき加減に咲くのは、水面に映る自分の姿を見るためである。
サクラソウ科サクラソウ属の花で、日本に自生し多くの改良種をもつ。科名も属名も学名では「プリムラ」で、これはプリムラ・ポリアンサの項でも述べたようにプライム(春一番)の意味。サクラソウの愛好家は多いようで、私の近隣にも、今の季節にはこの花だけを各種類集め、玄関にも塀にも庭にも飾っている家が数軒ある。プリムラ・ポリアンサのような派手さはないが、可憐さはこちらのほうが断然、上であると思う。
キンポウゲ科フクジュソウ属の多年草で、「スプリング・エフェメラル」(儚い春)の代表的な花だ。属名のアドニスはギリシャ神話に出てくる美少年の名で、愛と美と性の女神であるアフロディーテ(ビーナス)に愛された。彼の血から美しい花が咲いたとされ、伝承によれば「アネモネ」だとされている。アネモネとフクジュソウは同じキンポウゲ科の花なので、大きな違いはないのかもしれない。写真は開花直前のもので、明るい陽射しを受ければ完全開花に至る。なお、スプリング・エフェメラルについては本ブログの第2回で説明している。
オキナグサ(翁草)
キンポウゲ科オキナグサ属の多年草。これもまた典型的なスプリング・エフェメラルで、山野草として根強い人気がある。写真は開花直前のもので、数日以内に満開を迎える。全身が白い毛で覆われ、うつむき加減で開花し、種子もまた白く長い毛で覆われる。こうした様子から翁草と命名されたとされている。以前、私もよくこの花を育てていた。
アズマイチゲ(東一華)
キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、これもまたスプリング・エフェメラルとして人気がある山野草。属名は”Anemone"なのでアネモネと同じ仲間だ。アネモネは改良品種がとても多いが、アズマイチゲは山野草に相応しく清楚感が強い。写真は満開直前のもので数日先には凛とした姿になる。
ヒトリシズカ(一人静、吉野静)
センリョウ科チャラン属の多年草。スプリング・エフェメラルには数えられていないが、開花期はまったく同じである山野草。写真は開花が始まったばかりのもので、これから花は上に伸びてくる。吉野山で舞いを披露した静御前の姿になぞらえて命名されたとされ、かつては吉野静、現在は一人静と呼ばれる清楚な花。私は春の花を野原であちこち探し歩くことが多いが、この花を見つけたときが一番、嬉しくなる。
クロッカス(花サフラン)
アヤメ科クロッカス属の球根植物。秋に球根を植えておくと春先に咲く。一度植えると分球して数を増やすので、次の年には多くの花を見ることができる。ただし、成長は一定ではないので、できれば梅雨入り前に掘り起こして暗所で保存し秋に植えなおしたほうが美しく咲かせることができる。白、黄、紫の花が多いが、近年では写真のような白地に紫が入るものが人気が高い。ヒヤシンスと同様に水栽培も可能なので、室内で鑑賞することも可能。
クリスマスローズ(レンテンローズ、ヘレボルス)
キンポウゲ科クリスマスローズ属の多年草。西欧原産で、かの地ではクリスマス頃に純白の花を咲かせるので「クリスマスローズ」と名付けられた。一方、現在主流なのは西アジア原産の改良園芸種で、花期は2、3月がメインとなる。寒さにとても強く、日陰でもよく咲くので、近年では早春を代表する花となっており、プランターや路地植えで楽しむ人がとても多くなっている。かつては地味な色のものしかなかったのでさほど人気はなかったが、近年は色とりどりでしかも八重咲のものも出回るようになったために人気はうなぎのぼりだ。
花に見えるのは実はガクで、花弁そのものは退化して雄蕊の周りに小さく残るのみだ。この植物は「毒草」としても知られており、神経細やかな園芸家はこの植物を扱うときには必ず手袋をしている。学名のヘレボルスの”ヘレ”は「殺す」を、”ボレ”は「食物」を意味し、薬草にも使用されていた。
ノースポール(クリサンセマム・パルドサム)
キク科レウカンセマム属の改良園芸種。1970年頃、かつて「クリサンセマム・パルドサム」と呼ばれていた”フランスギク”を日本の「サカタのタネ」が改良して作出した園芸品種。今ではパンジーと並んで、冬から春の鑑賞花の代表的存在となった。茎はあまり伸びず花を多くつけるため、日当たりの良い場所では葉がほとんど見えなくなるほどの花盛りとなる。ただし日陰では茎が徒長し、花付きも悪い。撮影日(7日)は曇天だったために花弁はやや閉じ気味だが、明るい陽射しを浴びるとこれ以上ないほど目いっぱいに花弁を広げる。なお、品種名(商品名)の「ノースポール」は北極を意味する。どこに極があるのかは不明だが、命名はとても上手だ。
キンポウゲ科ミスミソウ属の多年草。北陸地方から東北地方の日本海側に自生する山野草だが、現在では改良園芸種が非常に多い。ネット通販などでも高い人気を誇る花だが、価格は一株400円程度のものから30000円以上するものまである。一般的なものでも2000円前後はする。色彩も形も数多くあり品評会も盛んにおこなわれている。
花弁は退化して存在せず、花びらに見えるのはガクである。葉はほぼ一年中残るが、花期以外は直射日光に弱いため、落葉樹の下などに地下植えするか鉢植えをしたものを置く。私も一時期この花の収集を試みたが、次々に新品種が現れるため、ついていけずに断念したという記憶がある。
ヒメリュウキンカ(姫立金花)
キンポウゲ科キンポウゲ属の多年草で、ヨーロッパでは沼地や湿地などに自生している。日本には園芸種として移入されたが、現在では野生化したものも多い。茎が上方に伸び(立)、黄色(金)の花を咲かせるので立金花と呼ばれる。湿地を好む花なので、鉢植えや地植えのときにもそうした環境を作る必要がある。写真(上)の花は園芸種。まだ開花が始まったばかりで、明るい日差しを浴びると花弁は大きく開く。写真(下)は府中崖線下の湧水脇で咲いていた野生種。
シュンラン(春蘭)
ラン科シュンラン属の花。ランは地中に根を張るものと地表で根を出すものとがあるが、シュンランは写真のように地中から顔を出す。洋ランの代表種である「シンビジウム」の仲間ではあるが、こちらはかなり地味。が、その点にこそ根強い人気の源になっている。春先、山里の林の中でこの花が顔を出している姿をよく見かけるが、くれぐれも「盗掘」しないように。園芸店で簡単に手に入れることができる。半日蔭を好み、根をよく張るので深さのある鉢に植えて日差しが強く当たらない場所で育てる。なお、ラン科の植物は700属、15000種以上あり、被子植物の中ではもっとも種類が多い。
ヒマラヤユキノシタ
ユキノシタ科ヒマラヤユキノシタ属の多年草でとても美しい花を咲かせる園芸種。ヒマラヤ原産のためか寒さに強いので早春から美しい花を咲かせる。根付くと、特に丁寧に手入れをしなくても毎年、多くの花を咲かせてくれ、しかも大きく育つので大きな鉢かプランターに植えると良く、可能ならば地植えが良い。花色はピンクや赤が多いが、”シルバーライト”と呼ぶ園芸種は白い花を咲かせる。花は美しいし花の名の響きも良い。が、この花の認知度はなぜかかなり低い。残念なことである。
アセビ(馬酔木)
ツツジ科アセビ属の常緑低木。葉や茎には有毒のグラヤノトキシンが含まれている(他のツツジ科の花も同様)ため、馬が食べると毒にあたって酔ったようにふらふらとした足取りになることから、馬酔木と記されるようになったという伝承がある(本当かな?)。以前はあまり見掛けなかったが、近年では春に花を咲かせる常緑低木の定番になりつつある。病気に強く挿し穂で簡単に増やせるからかも知れない。
花は小さいが、写真のように枝いっぱいに咲くので見ごたえはある。花は壺のような形をしていて「ドウダンツツジ」に似ているが、花数は断然、こちらのほうが多い。
改良園芸種もいくつかあり、写真の”クリスマス・チア”と呼ばれる品種はピンクの花が無数に咲き、今では白花よりも多く見かけるようになった。
ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木。香りが強いことでよく知られている花。その強烈な香りからその存在を知ることになる。早い場合は2月中旬頃には咲くので、散歩中にこの花の芳香に触れると春の到来を感じる。今は「香害」が問題視されているが、ジンチョウゲの香りは自然のものなので何の問題もない。ちなみに、秋の香りの代表格はキンモクセイだが、こちらは秋の到来というよりトイレの存在を実感するかもしれない。もっとも、キンモクセイ=トイレの芳香剤を連想するのは年配者で、中年はラベンダー、若者以下はトイレに結び付く香りはとくにないようだ。
ユキヤナギ(雪柳、コゴメバナ)
バラ科シモツケ属。公園や庭、街路などでよく見られる落葉性低木で、春には垂れ下がった枝に葉が見えなくなるほど無数の花を付ける。雪を被った柳のように見えるところから命名された。写真はまだ咲き始めなので緑の葉っぱが見えるが、これから一週間ほどで満開になる。満開時の美しさはサクラにも負けないほどだと個人的には思っている。小さな花びらが散った後の地面はお米を一面にまき散らしたように見えるため「コゴメバナ」の異名がある。
ミズキ科サンシュユ属の落葉性高木。3月初め頃、葉が出る前に黄色い小さな花を咲かせる。ひとつの花は多くの小花が集まってできている。
小さな花房(散形花序)をじっくり観察してみたが、やや盛りを過ぎていたようで、黄金色に輝くようには見えなかった。実は、この花をこうして観察したのは初めてだった。来年(もしあれば)にはこの木を早めに探し出して、その輝きに触れたいと心から思った。
オカメザクラ(おかめ)
1947年、英国人がカンヒザクラとマメザクラ(富士桜)とを交配して作出した早咲きのサクラ。花は小さくうつむき加減に咲くが、花びらは完全には開かない。花色はかなり濃い。木はあまり大きく育たないので、梅の木と勘違いされることもあるようだ。小田原市の根府川地区ではこの早咲き品種で桜の里作りをおこなっている。果たして、第二の河津桜になるだろうか?
カンヒザクラ(寒緋桜、元日桜)
サクラの原種のひとつ。早咲きで、釣鐘状に咲き、濃い花色などから多くの自然交配種(河津桜)や 人工交配種(おかめ)が誕生している。前2種の桜のほか、修善寺寒桜、椿寒桜、陽光、横浜緋桜などが代表的なカンヒザクラ群である。