徘徊老人・まだ生きてます

徘徊老人の小さな旅季行

2020-01-01から1年間の記事一覧

〔52〕狭山丘陵(1)~台地に浮かぶ島

尾根と尾根との間の谷筋には住宅が立ち並ぶ 狭山丘陵は多摩川が造った武蔵野台地上の島 「秩父の山麓より海岸に至るまで殆んど高低なき僅かの波状を有てる此の台地(武蔵野台地のこと)の上に、此の如き丘陵(狭山丘陵のこと)を発達して居るといふことは實…

〔51〕3ケタ国道巡遊・R411(5)~盆地の辺縁から甲府市街へ

愛宕山から富士山を望む 山があっても山なし県 ガキンチョのとき、”県名言葉遊び”というのが流行った。今もあるかもしれない。「すべってころんで大分県」「山があっても山梨県」というのが代表的で、それ以外は無理矢理にこじつけたようなものだったのでと…

〔50〕3ケタ国道巡遊・R411(4)~柳沢峠から甲府盆地へ。そして少し寄り道

R411最高地点の柳沢峠からの眺め 丹波山村の中心地から分水嶺へと向かう 丹波山村の形はどことなく、しっぽの太いマンタが秩父市街に向かって遊弋するようでもあり、太った北海道のようでもある。仮にマンタに例えるなら、右(南東)の胸鰭は鴨沢集落の…

〔49〕3ケタ国道巡遊・R411(3)~奥多摩町、そして山梨へ

”道の駅たばやま”に入るための丁字路 古里(こり)から奥多摩湖に向かう 万世橋で多摩川を渡り、吉野街道は青梅街道に吸収される 古里駅前交差点で、国道411号線(R411)は吉野街道を吸収し、しばし一本道となって奥多摩湖を目指して西へ進む。この「…

〔48〕3ケタ国道巡遊・R411(2)~青梅市から奥多摩町を行く

軍畑駅入口交差点から御岳山頂を望む R411は青梅街道となって西を目指す R411はこの交差点から青梅街道を名乗る 写真は、国道411号線(R411)と、これまで都道5号線(r5)として西進してきた青梅街道とが出会う丁字路をr5側から見たもの…

〔47〕3ケタ国道巡遊~徘徊老人R411を行く(1)

友田交差点にあるR411の道標 かつて、ルート66というドラマがあった 『ルート66』(1960~64)というテレビドラマがあった。日本でも61年から放映された。私はまだガキンチョではあったが、そのドラマをかなり真剣に見ていたという記憶はあ…

〔46〕野川と国分寺崖線を歩く(4)深大寺界隈(後編)

お寺の鐘は三度、響き渡る 深大寺の歩みを概観する 深大寺の開創は『深大寺真名縁起』では733年、『私案抄』では757~64年である。前者は深大寺の僧・辨盛が1650年に著したもので、1646年の火災により深大寺に存した縁起・経疏・霊仏・霊宝…

〔45〕野川と国分寺崖線を歩く(3)深大寺界隈(前編)

深大寺は法相宗の寺として733年に創建された 深大寺縁起ものがたり 現在の調布市佐須町が「柏野」と呼ばれていたころ(市立柏野小学校の名前として残っている)、その地には右近長者という豪族が住んでいた。右近と虎女との間にはひとりの美しい娘がおり…

〔44〕野川と国分寺崖線を歩く(2)流域今昔物語

野川と西武多摩川線と武蔵野公園と 前回の最後に挙げたように、野川は「新小金井橋」の下流部から、それまでとはまったく異なる表情に変わる。それは川自体というより、その流域の姿が一変するからである。源流部のすぐ南の中央線直下から顔を出した野川の流…

〔43〕野川と国分寺崖線を歩く(1)私は野川に入れるか?

野川と中央線と 野川に入ることはできるか? 「行く川の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。」 川について触れるとき必ずといって良…

〔42〕横須賀市夏島町地先に集う人々

脚立に乗って釣りする人たち マルクスの警句 「どんな株式投機の場合でも、いつかは雷が落ちるにちがいないということは誰でも知っているのではあるが、しかし、誰もが望んでいるのは、自分が黄金の雨を受けとめて安全な場所に運んでから雷が隣人の頭に落ち…

〔41〕多磨霊園~夢見る死者が眠る公園

ゾルゲの墓 私は夢をよく見る。夢といっても、将来、ユーチューバーになりたいだとか、花屋さんになりたいだとか、飛行機の運ちゃんになりたいだとかの類ではない。眠っているときに見る夢である。以前から眠りが浅く、齢を重ねるごとにさらに浅くなり続けて…

〔40〕八王子の城跡を歩く(3)悲劇の八王子城(後編)

麓にある管理棟。左に行くと御主殿跡、右に行くと本丸跡 豊臣秀吉との決定的対立 1578年頃より、北条氏(後北条氏、小田原北条氏。以下北条氏と表記)と真田氏とは沼田領問題で抗争が続いた。沼田領は北関東の要衝で関東平野の北西の縁にあり、北に進ん…

〔39〕「つゆのはしり」に濡れながら思うことなど

東八道路のガードフェンスで見つけたツキヌキニンドウ 9月入学というバカげた議論 ここにきて新型コロナの新規陽性者の確認数が減ってきており、残る5都道県の緊急事態宣言の解除がおこなわれることになった(一時的だと思うが)。これは国民の大半が素直…

〔38〕季節は初夏へ~アカシアの雨はまだ降らない

ニセアカシアの花 アカシアの雨ではまだ死ねない 「願はくは アカシアの雨にて 夏死なん 皐月の末の 望月のころ」 もちろん、これは贋作であり、元歌は西行の誰もが知る作品である。 西行、芭蕉、福永武彦、中島みゆき、カント。この5人が私の心の師である…

〔番外編〕コロナ禍の中、季節は春から初夏へ~花散歩

4月下旬から秋まで咲き続けるサルビア・ミクロフィラ コロナ禍の中で思うこと コロナ禍である。釣り場に近い駐車場はほとんど閉鎖されているので釣行はままならない。植物園、自然公園などが閉鎖中なので春の山野草の開花に触れる機会を多く逃した。大学の…

〔37〕八王子の城跡を歩く(2)悲劇の八王子城(前編)

8年前に建てられたガイダンス施設内の展示(現在はコロナ禍で休館中) 八王子城造営にいたる時代背景 天正18年(1590年)6月14日、現在の埼玉県寄居町にある「鉢形城」は豊臣勢の北国支隊ら35000の兵に包囲されながら約一か月間の籠城戦を戦…

〔番外編〕花に誘われ春紀行

春の妖精・カタクリの花 花の命は短いけれど 前回でも述べたように3月下旬は、今や山野草の代表格となったカタクリの花が満開になる時期だ。例年は埼玉県小川町にある「カタクリとニリンソウの里」に訪れ、山の斜面に植えられているカタクリと、手前の平ら…

〔番外編〕春を探して花季行(2)

「華やかな魅力」が花言葉のラナンキュラス 新型コロナの影響は近所にある市立図書館にまで及び、本を借りることができるのはネット予約のみで、館内閲覧での本探しは不可能になってしまった。本とのめぐり逢いは人との邂逅と同じような大きな喜びがあるので…

〔番外編〕春を探して花季行(1)

春の「雑草」の代表格、ホトケノザ 私にとって春の到来を実感するのは「爽やかな風」でも「温かい陽光」でもなく、路傍で、あるいは公園や空き地でホトケノザ、ヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、カラスノエンドウなどの花を見出したときだ。ガーデニング…

〔36〕八王子の城跡を歩く(1)滝山城跡を中心に

本丸跡にある石碑 八王子界隈には城跡が多くある 平らなだけが取り柄の府中市にはこれといった城跡はなく、せいぜい浅野長政屋敷や高安寺館が拡大解釈されて「城」に含まれるといった程度だ。一方、山がちな八王子市界隈にはたくさんの城跡がある。日本10…

〔35〕三匹のオッサン・旧東海道を少しだけ歩く

川崎宿・宗三寺にある遊女の供養塔 三人のオッサンが旧東海道をダラダラと歩くことにしたのだが 謹厳実直を形にするとSさんになり、変な哲人といえばKさんになり、ただ単に変な奴というと私になる。本ブログでは紹介していないが、昨年はこの三人で鎌倉の…

〔34〕多摩丘陵・「聖蹟桜ヶ丘」周辺散歩

桜ヶ丘公園内にある「旧多摩聖蹟記念館」 聖蹟桜ヶ丘の「聖蹟」とは? 京王線には「聖蹟桜ヶ丘」駅がある。府中駅から京王八王子駅方面に進むと、「分倍河原」「中河原」の次がこの駅になる。前々回の後半に書いたように、小学生のとき「ただ券」が入手でき…

〔33〕「とはずがたり」に「かたらいの路」を語る~多摩丘陵散歩

高幡不動尊の見晴台から府中、都心方向を望む まずは「高幡不動尊」から多摩丘陵へ 鎌倉時代末期に記されたとされる『とはずがたり』は、後深草院二条(本名不詳)が14歳から49歳までを回想するという形式をとる日記文学だ。前半3巻には作者が後深草院…

〔32〕普通の府中市(2)~その町中を歩く

大國魂神社の随神門と参道を望む 転換の10世紀 菅原孝標(すがわらのたかすえ、10~11世紀の人)は菅原道真の直系という名門の出身でありながら平凡な人生を送った。受領国司として上総介・常陸介の任についたことは判明しているが、これは両国が「親…